傾斜と曲線が続く山岳路での安心感
スイスの山岳地帯は、訪れるたびにその厳しさと美しさを再認識させられます。
標高を上げるにつれ、道幅は徐々に狭くなり、傾斜はきつく、急カーブが連続します。視界の先にそびえる岩肌と深い谷のコントラストは圧巻ですが、運転には常に神経を使わざるを得ません。
そんな中で乗っていたのが、レンジローバーです。地元のレンタカー会社で手配した1台でしたが、いざ山道を走り始めてみると、この選択が非常に心強いものであるとすぐに実感できました。
まず特筆すべきは、傾斜のある路面での安定性です。四輪駆動システムが絶妙に効いており、タイヤのどれかが滑りそうになっても、すぐに他のタイヤが補うように踏ん張ってくれます。
狭く荒れた峠道でも車体が浮いたりバタついたりすることはほとんどなく、まるで地面を這うように進んでいく感覚がありました。
登坂中に一度だけ、道の脇に寄せて反対方向から来た大型バスに道を譲る場面がありました。そのときの微調整のしやすさからも、足まわりの制御がいかに繊細であるかを実感しました。運転席に座ると、ただのSUVではないことが伝わってきます。
高いアイポイントと直感的な安全装備
レンジローバーに乗ってまず感じたのが、アイポイントの高さによる圧倒的な視界の良さです。
スイスの山道はガードレールがない場所も多く、道幅ギリギリでのすれ違いが頻繁に発生します。そうした場面で車両感覚を正確に把握できる視認性の高さは、大きな安心材料になります。
また、搭載されていた360度カメラや車幅センサーも効果的でした。狭い橋を渡るときや、斜面のカーブを曲がるときに、死角をカバーしてくれるおかげで、不安を感じることなく運転を続けられました。
さらに、下り坂で活躍するヒルディセントコントロール機能も印象的です。
ブレーキを踏まなくても自動で適切な速度に抑えてくれるため、エンジンブレーキと併せて極めて滑らかな下降が可能になります。とくに雨のあとの滑りやすい区間では、この機能に助けられる場面が何度かありました。
レンジローバーの安全装備は、見た目の重厚感にとどまらず、実際の走行場面でその実力を発揮してくれます。
風景の中に溶け込むクルマとの旅
走行中、車内は常に静かで落ち着いた空間が保たれていました。
サスペンションがしなやかに衝撃を吸収してくれるおかげで、細かな振動はほとんど伝わらず、長時間の運転でも疲れを感じにくいのが印象的です。エンジン音も抑えられており、耳に届くのは風の音とタイヤの接地音だけという静けさが心地よく感じられます。
そしてなにより、走行中にフロントガラス越しに見える風景の美しさが格別でした。
レンジローバーの高い着座位置から望むアルプスの山々は、まるで一枚の絵のように広がり、森林限界を超えたあたりでは、岩肌と雪渓が混ざり合った荒涼とした大地が続いていました。
途中、小さな湖の脇で停車して昼食をとったときも、レンジローバーの存在が旅の景色に自然な一体感を与えてくれていたように感じます。
停まっているだけでも風景に溶け込み、クルマが風景の一部として機能しているような感覚がありました。
運転を終えて宿に着いたとき、何よりも印象に残っていたのは「安心して走れた」という実感です。
路面状況が変わりやすいスイスの山岳地帯において、信頼できる走行性能を持つクルマがそばにあるということは、それだけで旅の充実度を高めてくれると改めて感じました。
レンジローバーは、ただ険しい道を走破するための道具ではなく、旅そのものを豊かに彩ってくれる存在です。